川の保育園は「認定こども園ふたば」が長年取り組んできた、オオサンショウウオを保護する活動が元になって発足しました。 安佐動物公園が地域のみなさんの支援を受けて一緒に取り組んできた、「認定こども園ふたば」(川の保育園)のあゆみを紹介します。
1973年
「認定こども園ふたば」の園庭のとなりを流れる大口川にオオサンショウウオが棲息していることを知り、安佐動物公園に相談したことをきっかけに、「認定こども園ふたば」と動物園の関係が生まれました。 調査の時にはよく立ち寄っていただき、オオサンショウウオの話を聞かせていただき、川とオオサンショウウオへの関心を深めていきました。特に、産卵のために遡上したオオサンショウウオたちが堰堤を登れず、足に穴があくほどもがいている姿に、子どもたちと心を痛めていました。
1985年
大口川に合流する松歳川に日本で初めてのオオサンショウウオのための人工巣穴ができ、産卵に成功して雄親が子育てをしている話を聞いては、子どもたちと応援しました。
1994年
堰堤が登れずもがいているオオサンショウウオのために、移動式人工巣穴が安佐動物公園により園庭横の大口川の堰堤の下に設置され産卵にも成功しました。子どもたちは堰堤下に集まるオオサンショウウオを「サンちゃん」と呼んで親しみ、日常の中で見守るようになりました。
2003年
地域の人に集まってもらい、安佐動物公園が地域のオオサンショウウオのすべてを説明しました。松歳川の人工巣穴の入り口が土砂で埋まり繁殖がうまくいかなくなったので、地域の人の応援を求めたいとの相談に、地域の人が人工巣穴の砂を掻くことを引き受け、地域と動物公園の協働によるオオサンショウウオの保全が始まりました。
オオサンショウウオのことをもっと知るために、「認定こども園ふたば」が主催して「サンちゃんと友達になる会」を開催。ネイチャーゲームやほたる観察会、地元アーティストによるミニコンサートを開催、安佐動物公園の飼育員からオオサンショウウオの生態や習性や、身近に住んでいても気づかなかった川の生きものについて説明をしてもらいました。また、地域のお年寄りがもつ暮らしの知恵を子どもたちに披露し、「おじいちゃん、おばあちゃんってすごい!」と感じる場づくりを行いました。そして、このサンちゃんと友達になる会は翌年から毎年開催することになりました。
2004年
オオサンショウウオの保護と地元の自然と文化を発展させる町づくり組織「三ちゃんS村」が設立されました。この年から「サンちゃんと友達になる会」は、「三ちゃんS村」が主催する「川まつり」と統合し、地域住民と一体となった地域行事として運営されるようになりました。
2005年
「三ちゃんS村」の陳情により、大口川の堰堤が改修され、オオサンショウウオが登って行けるようになりました。その横の土手に常設の人工巣穴が設置され、観察用の窓から園児がオオサンショウウオの様子を見ることが出来るようになりました。
NHKの番組「地球ふしぎ大自然」の取材が行われ、志路原のオオサンショウウオが全国に放映されました。
2006年
安佐動物公園のは虫類館に「認定こども園ふたば」周辺の自然を再現した水槽が設置されました。除幕式には「認定こども園ふたば」の園児が招待され、「サンちゃんの歌」を歌ってお祝いしました。
2007年
地域と安佐動物公園の楽しい保護活動を綴った写真絵本「川の王さま オオサンショウウオ」が安佐動物公園から発刊(新日本出版)、全国の学校図書にもなりました。
ニュージーランドからネイビア市市議会議員・環境保護委員カウンセラーのハリーローソンさんが「認定こども園ふたば」を訪れました。ニュージーランドの美しい海や川などのお話しを聞かせてもらいました。
イギリス国営放送のBBCが日本に棲息する貴重なオオサンショウウオを特集する番組製作のため来日し、撮影地の一つに選ばれました。この番組は全世界に放映されました。
RCC報道センターが訪れ、オオサンショウウオの保護活動をする園児の様子を取材しました。
2008年
国土交通省土地・水質源部水源地域対策課から水源地域活性化リーダー養成研修会が行われ、三ちゃんS村や「認定こども園ふたば」の取り組みを視察されました。
北広島・大自然と友達になる講座が庄原市国営備北丘陵公園で開催されました。安佐動物園の飼育員さんと9才のオオサンショウウオが会場を訪れ、公開されました。
2009年
アメリカワシントン州のスミソニアン動物園、ロンドン動物園、ドイツのテレビ局が相次いで「認定こども園ふたば」を訪れ、オオサンショウウオとその保護活動の様子を視察や取材をされました。
安佐動物公園のオオサンショウウオの生態調査や地域と連携した棲息環境づくりの取り組みが評価され、第1回日本動物大賞「動物愛護賞」を受賞されました。
2010年
国際生物多様性会議(COP10)のため日本を訪れていたアメリカ、カナダ、イギリスの環境保護団体の一行が「認定こども園ふたば」を訪れ、オオサンショウウオの棲息環境や人工巣穴などを視察されました。
2011年
NHK「ダーウィンが来た!」にオオサンショウウオが取り上げられることになり、取材陣が訪れました。ウェットスーツを着たカメラマンが川に潜り、ハイスピードカメラでエサを捕食するシーンの撮影に成功し、「日本 清らかな水辺②『里山の王者!オオサンショウウオ』」というタイトルで全国放映されました。
アメリカのスミソニアン国立動物園のスーザン ムーリー獣医師とエドワード ブロニコフスキー上級飼育展示課長が訪れ、オオサンショウウオが好む棲息環境について調査されました。
日本動物園水族館協会両生爬虫類会議が開催され、全国の動物園、水族館から13名が訪れました。
夢たまご・きたひろしまミュージカルの演目に「ミドリのオオサンショウウオサンちゃん」が製作されました。この物語は絵本となり、園児への読み聞かせなどに活用されています。
2012年
広島県の新しい公共の場づくり事業に採択され、これまでの「認定こども園ふたば」の活動を基盤に特徴ある保育園として発信し、川や里山の地域資源を積極的に保育活動に活用するカリキュラムを検討し、2013年から「認定こども園ふたば」の副名称として「川の保育園」とすることが決まりました。これにより、過疎高齢化が進行する志路原地区に子育て世代の定住が促進されることを期待しています。